2015-01-01から1年間の記事一覧

「電車居住者」

大正12年。十蘭、21才の作品。 最初期の作品らしい。ペダンティックな単語が綴られるあたりは、既に十蘭である。 内容的には関東大震災の直後に書かれたものらしく、荒廃した世界で電車のなか で暮らす人々を描いている。 主人公が寄る辺ない娘の未来を心配…

『戦艦ポチョムキン』(1925)

初見。有名だけれど、見ようという気がなかった。 ネットに落ちてなかったら、この先も見なかったかもしれない。 モンタージュという技法もみていて、わからなかった。 国際都市オデッサのイメージから、ソ連映画とは違うものなんだろうな、という先入観はあ…

2015年11月

2015年11月の読書メーター読んだ本の数:5冊読んだページ数:1710ページナイス数:6ナイスハルモニア (文春文庫)の感想読後感あまりよくない。 障害者を利用した芸術至高主義みたいな嫌な感じ。 戦前的な探偵小説として読むにはいいのだろうが、人間という存…

「勉強記」坂口安吾

梵語やらパーリ語やらチベット語やら、日本から見たら少数言語を学ぶやら学ば ないやら、主人公は変な学生だったりはするが、小説というよりはエッセイに近い。 とはいえ、谷崎や足穂のホラ話のような趣きでもある。 このだらだらとした緊張感のまるでなさが…

「結婚申込み」チェーホフ

チェーホフ、オモシロスギル。 人間の根本的な欲望とか行動がよくわかっていらっしゃる。 だから全然古びない。 この短篇も結婚申込みをしにきたはずの男が、結婚申込みあいての持ち物につい ていろいろ批評する。 それに対して娘も所有欲からあれこれ言い負…

「粉屋の話」チョーサー

14世紀の話とは思えないほど、おもしろい。 学生の頃、読んだはずなのにこんなつまらない読み物はないと記憶していたのだが。 西脇順三郎の訳もすばらしいと思う。 ノアの箱舟を引き合いに出す、ドタバタな喜劇といえばよいか。 いまでも演劇としてやっても…

「死んでいる時間」マルセル・エーメ

「死んでいる時間」マルセル・エーメ 確かに奇妙な話しで、24時間おきに自分が居なくなってしまう話し。 ついつい引き込まれてしまう語り口。 色沙汰で締めなくても、十分に楽しめる短編集。

「太陽の中の女」ボンテンぺルリ

「太陽の中の女」ボンテンぺルリ むかし稲垣足穂の飛行機ものを読んでいるときにも感じた不可解な感覚と同じ感 触があった。 飛行機を身近にかんじないとわからないだろう、このユーモア、どうだね、君に 分かるかね、という踏み絵を踏まされている感じがす…

「世界文学は越境する」

「世界文学は越境する」 池澤夏樹+沼野充義+鴻巣友季子 文学界2008年2月号池澤夏樹個人編集「世界文学全集」が刊行された頃の対談。 この頃、ようやく少しは海外文学の紹介が盛り上がってきたのだろうか。 いまはまた冬の時代のような気もする。 読みたく…

「本は友だち」池内紀

川魚図志作者: 芦原修二出版社/メーカー: 崙書房出版発売日: 2001/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「利根川中下流域の五川三沼が主な舞台だ」 「川で生きてきた人々の口を通して川魚の本をつくる」江戸漂流記総集〈第1巻〉 (石井研堂コレクシ…

2015年10月

2015年10月の読書メーター読んだ本の数:2冊読んだページ数:589ページナイス数:3ナイス飲み屋のロック (SOFTBANK BOOKS)の感想ほんとに飲み屋での戯言集。すばらしい。おもしろう。読了日:10月30日 著者:みうらじゅん数学者の哲学+哲学者の数学―歴史を通…

「関係の原的負荷」加藤典洋

「関係の原的負荷」加藤典洋親殺しが増えている現在から、文学的な痕跡をもとに現在を辿ろうとしてる。 志賀直哉「和解」と沢木耕太郎「無名」の類似性と作家の出自をもとに彼らの文 学の類似性をたどっていく。 いくぶんにも関係性のこじつけのような気が多…

「会いたい人と会うように」

江藤文夫の仕事〈4〉1983‐2004作者: 江藤文夫出版社/メーカー: 影書房発売日: 2006/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る百物語 (新潮文庫)作者: 杉浦日向子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1995/11/30メディア: 文庫購入: 14人 クリック: 56回この…

ささやき

自分のいびきが気になって、夜中にテープ録音したのを再生していたら、いびきをかいていたのではなくて、想像もしない訪問者が。。 という短くもよくできた、怖い話。 巻末の解説者が書いているとおり。 「奇想の大胆さと見事なコントラストを描く切なさは、…

SFM

SFマガジン2015年6月号 ハヤカワ文庫SF総解説PART2 (501-1000)読みたいB級本はこれ。 いまでは凄く、ルーディ・ラッカーが目立つ。 明日を越える旅 (1983年) (ハヤカワ文庫―SF) 文庫 – 古書, 1983/4 ロバート・シェクリイ (著), 宇野 利泰 (翻訳) カエアンの…

「反復的な集合観」ジョージ・ブーロス/中川大訳

反復的な集合(iterative conception)とは何かを知りたくて読んだのだが、わからなかった。 ラッセルのパラドクスで有名な集合は矛盾を含むことからはじまり、ZFの公理は無矛盾であり、素晴らしいことを説いている。 置換公理によって、多くの望ましい帰結…

「地球防衛軍」

「地球防衛軍」ディック 「永久戦争」所収 浅倉久志訳冷戦時代が作り出したシニカルな短篇。 いま読むと、米国とソ連が和平を結べば地球は平和になり、人類は進歩するはずといった理屈が浅はかに見えてしまうほど、その後の世界の動きが後退し続けている印象…

「良い狩りを」ケン・リュウ 古沢嘉通訳サイバーパンクを通り越したファンタジィ。 清朝末と思われる時代背景に人体改造の技術が発達しているという歴史改変もの といえるが、前時代をパスティッシュしたようなおとぎ話と言えばよいか。 それとも香港映画の…

「防空壕」

「防空壕」江戸川乱歩 「戦争中に夜間空襲を受けた体験を描いて、意外な結末をつけたもの。B29の空襲を恐怖するよりは、夜の大空の美しさにうたれたことを書いたものである」江戸川乱歩推理小説だからか、自らの作風に擬えたからなのか、斜に構えた空襲の…

SFM

SFマガジン2015年4月号 ハヤカワ文庫SF総解説PART1 「ハヤカワSF文庫2000番到達記念」らしい。 1970年8月に創刊、「さすらいのスターウルフ」ハミルトンから「西の反逆者」セイバーヘーゲンまでを紹介。 読んでない名作とかチェックできるのがええ。 でも読…

「数学者の哲学・哲学者の数学」

現代における数学の存在学のような対談集。 数学者の砂田利一+長岡亮介、哲学者の野家啓一である。 野家は昔から「現代思想」で読んできたので、なんとなく言っていることがわか るが、数学者連はよくわからない。 しかし「現代思想」でよく対談していたひ…

姫路にいく

シンポジウムで姫路に行ってきた。 片道六時間もの遠距離移動はひさしぶりでとにかく疲れた。 姫路名物はえきそばというそば汁にラーメンをいれたのを食べたけど、おいしい ともまずいとも思えず。 姫路は二度めだけれど、姫路城にも時間がなくていけず。 あ…

信毎新聞10/11

「105歳の料理人ローズの愛と笑いと復讐」 作者: フランツ=オリヴィエジズベール, Franz‐Olivier Giesbert, 北代美和子 メーカー/出版社: 河出書房新社105歳の料理人ローズの愛と笑いと復讐作者: フランツ=オリヴィエジズベール,Franz‐Olivier Giesbert,北代…

2015年8月

2015年8月に読んだ本 2015年8月の読書メーター読んだ本の数:8冊読んだページ数:3095ページナイス数:43ナイスオリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)の感想物語終端の「その人を憎み追いつめる情熱で、あの非人間的な体制を憎みなさい」というジーナの言…

ラスプーチンが来た

山田風太郎明治小説全集 11 ちくま文庫 明治の破天荒な物語。 タイトルのラスプーチンが登場するのは物語のなんと後半。 それまでは明石元二郎という豪快な正義漢が活躍でひっぱる、ひっぱる。 しかも面白すぎる。 解説の津野海太郎が書いているように、「こ…

三匹の侍

[映画]三匹の侍 小学生ぐらいのときにテレビで見たと思う。 そのときはたぶん連続テレビ番組だったと思うから、映画を見るのは初めてだろう。 映像もストーリーもよく練られていて、エンタメ度も高い。 でも明快な道徳というか倫理観に貫かれている。 丹波哲…

2015年4月

2015年4月に読んだ本 2015年4月の読書メーター読んだ本の数:3冊読んだページ数:1102ページナイス数:1ナイスあなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)の感想新しい小説を読みたい人にはおすすめ。 異星人とのコミュニケーションから人間の心の基層を問うような…

クローム襲撃

午前中はTinyCoreLinuxで遊び、昼は末娘の誕生日お祝い。 午後、街中にでると凄い人々。連休だね。 長男とラーメン食べて帰ってくる。疲れた。 なんだかさえない一日。 『クローム襲撃』(原題:Burning Chrome)は、ウィリアム・ギブスンによる短編SF小説お…

午前中、城山へ行く。 善光寺はひどい混み様。車も人もなにもかも。 地元がうるおうことはいいことだろうが、こちらは何もメリットがない。いいことがない。 車もつかえず、どこへ行く気にもならない。 因果な連休である。 ヴクサヴィッチ「僕らが天王星に着…

吸血鬼

連休がスタートする日は仕事であった。 簡単に休めないので、あれこれバックログを片付ける。 帰りに渋滞にあう。 早くも連休の波状攻撃かと思いつつもトンネル内の事故だった様子。 しかしトンネルでの事故にはあいたくないよね。「吸血鬼」ジャン・ミスト…