ラスプーチンが来た

山田風太郎明治小説全集 11 ちくま文庫
明治の破天荒な物語。
タイトルのラスプーチンが登場するのは物語のなんと後半。
それまでは明石元二郎という豪快な正義漢が活躍でひっぱる、ひっぱる。
しかも面白すぎる。
解説の津野海太郎が書いているように、「この化物化された実在人物による幻想的暗黒小説の手法は、のちに時代を大正昭和にずらして荒俣宏帝都物語にひきつがれてゆく」
そうか、帝都物語のルーツは久生十蘭の『魔都』だと思っていたのだが、山田風太郎であったとは。
久生十蘭とは確かに雰囲気が違いすぎるもの。
そうして照らし合わせると、快男児明石元二郎というのは加藤保憲である。
まあ山田風太郎のは講談と近く正義漢でないとつとまらないが、昭和も過ぎると悪役でないと物語が縮んでしまう。そうした配役の違いはあるものの、文学者を化物のしてしまう手法はそのまま。
しかもそれが面白すぎる。
帝都物語」もこの「ラスプーチンが来た」も。
そしてラスプーチの方のラストは思わしげに次作がありそうなエンディングである。
いやはやだれか続編書かないものだろうか。