2018-01-01から1年間の記事一覧

「宮廷狩猟の場所で」オリガ・ラリオーノワ

「宮廷狩猟の場所で」オリガ・ラリオーノワ 訳:飯田規和「ポリオラの昼は地球の時間で七ヶ月続く。」 ポリオラという惑星を調査している話。 一角獣や二角獣が住む、特異な惑星の動物の生態や男女の関係がからむもの。 文学雑誌「オーロラ」に発表されたもの…

マインド・ウィンド

山野浩一「マインド・ウィンド」を読む。 これも傑作。 レミングの集団自殺になぞらえた集団散歩が世界で流行する。 その現象を商社の地方周りの営業マンの視点でその謎とともに、その意味をなぞらえていく。 いわゆる「レーゾンなんとか」、存在意義を扱っ…

首狩り

山野浩一「首狩り」を読む。 これは傑作。 首だけにされてしまう人々とその首を狩る者の話である。 なぜ首だけにされてしまうのかは、あとで明かされていくのだが、それまでの首を狩る男の独白が面白い。 心理的に迫るストーリーは、この頃の初期の筒井康隆…

「チャアリイは何処にいる」

フィラデルフィアで起きた実業家のふたりの息子の誘拐事件を描いた 牧逸馬の熟練した話風による実話。 こうした牧逸馬の実話は落語みたいなもので、もはや芸でもある。 地元の警察と誘拐犯のやりとり、実業家の両親の嘆き、市井の色めきなど がうまく伝わっ…

2018年11月の読書

11月の読書メーター読んだ本の数:1読んだページ数:108ナイス数:5自然と美学―形体・美・芸術 (1972年) (叢書・ウニベルシタス)の感想「形体」「美」「芸術」の三部構成の小論集。 カイヨワの「美」というものの本質を鉱物といった無機物を含む自然物の有り…

2018年10月の読了

2018年10月の読書メーター 読んだ本の数:2冊 読んだページ数:1109ページ ナイス数:16ナイスhttps://bookmeter.com/users/68678/summary/monthly ■ハルビン・カフェ (角川文庫) 大藪春彦直系のハードボイルドという感じ。 平成の大藪春彦と言ってもよいの…

メシメリ街道

山野浩一「メシメリ街道」を読む。 続けて筒井康隆編集の「'72日本SFベスト集成」の山野浩一「メシメリ街道」を読む。 これは昔、SFにはまっていた頃、「殺人者の空」で読んだ。当時はこれをニューウェイブとは捉えていなくて、この自分たちが住む近所、あ…

X電車で行こう

筒井康隆編集の「60年代日本SFベスト集成」が出てきたので、山野浩一「X電車で行こう」を読む。 再読なのだが、記憶は薄いモヤのなかにあり、当時はあまり感動してなかったのだろう。 しかしいま読むと解説で筒井康隆が書いている通り、「凝った章立てや構成…

2018年9月の読書

2018年9月の読書メーター 読んだ本の数:1冊 読んだページ数:405ページ ナイス数:12ナイスhttps://bookmeter.com/users/68678/summary/monthly ■J・G・バラード短編全集2 (歌う彫刻) 初期短篇を読み直す感じだったが、何十年も前に読んだバラードの印象と…

東海道寄り道紀行

東海道寄り道紀行 単行本 – 2012/7/21 種村 季弘 (著)[内容紹介] ドイツ文学者、評論家にして温泉マニアの貴重な単行本未収録紀行文集。東海道周辺から、奥飛騨、山陽方面まで。お湯、鉄道、民俗の旅。[感想] ドイツ文学者である、故、種村季弘さんの単行本…

「ミステリ・オペラ 宿命城殺人事件」 (ハヤカワ・ミステリワールド) 単行本 – 2001/4 山田 正紀 (著)【紹介】 昭和13年の満州と平成元年の東京。50年の時空を隔てて、それぞれの時代で起きる奇怪な事件。本格推理の様々なガジェットを投入した壮大な構想の…

ミステリ・オペラ

「ミステリ・オペラ」

「バーナム博物館」スティーヴン・ミルハウザー

『バーナム博物館』は、表題作をふくむ十の短編を収めた幻想短篇集である。 表題作は、怪奇趣味とノスタルジーで彩られ、街の人々に愛されている、奇妙な博物館を描く「バーナム博物館」。 幻想小説に特有な「迷宮」や「魔法」や「幻影」といったノスタルジ…

澁澤さん家で午後五時にお茶を

「澁澤さん家で午後五時にお茶を」種村季弘幻想文学の二大巨匠といってよいのか、どうか。 文学だけではなく、魔的な絵画や博物誌にまで及ぶのは、このふたりに共通した何かしらである。 その盟友が澁澤龍彦に関する書評やエッセイを一冊にまとめたもの。 19…

行人

「行人」夏目漱石兄弟である弟を語り手に、孤独に生きる兄を描く家族小説。 妻を信じることもできず、妻の愛情を弟に確かめさせるような行動にも出る兄。 高等遊民という言葉でも語られてきた後期三部作であり、「塵労」という仏教用語を使い、厭世的な世界…

彼岸過迄

後期3部作の第1作である。 再読だけれど、ほとんど筋を覚えていなかった。 漱石はその序文で、数本の短編が集まってひとつつの長編を構成する作品、だと言っている。 しかし、そんな感じはなく、漱石らしい長編小説、あるいは新聞小説といった風だった。 「…

ニッポンの穴紀行 西牟田靖

ニッポンの穴紀行 近代史を彩る光と影 西牟田靖 「穴」というキーワードで集められた産業遺跡を訪ねる旅というか、雑多な廃墟文集 興味深いものもあるが、退屈なものもある。 読んで興味を持つものもあるが、なんとなく日本の戦争に関する言葉が薄いような気…

「隣接界」

「隣接界」クリストファー プリースト 内容紹介 近未来英国、フリーカメラマンのティボー・タラントは、トルコのアナトリアで反政府主義者の襲撃により最愛の妻メラニーを失ってしまう。住まいであるロンドンに帰るため、海外救援局(OOR)に護送されるタラン…

坑夫

『坑夫』夏目漱石漱石のもとに「自分の身の上にこういう材料があるが小説に書いて下さらんか。その報酬を頂いて実は信州へ行きたいのです」という話を持ちかける出来事が、この小説の発端とされている。 漱石には珍しい、実在の人物の経験を素材としたルポル…

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと

SF

チャールズ・ユウ物理学的な多次元世界を舞台に父と子の葛藤を描く家族小説。 とでも呼べばよいのだろうか。 とにかく、ヘンな小説であることには間違いない。 面白いかと言われると、多少は。 と答えざるを得ない。 論文を読んでいくような楽しみがある人に…

シャーロック・ホームズの復活

シャーロック・ホームズの復活 (創元推理文庫) 文庫 – 2012/6/29 アーサー・コナン・ドイル (著),‎ 深町 眞理子 (翻訳) 深町眞理子さんの訳がいいね。深町眞理子さんの新訳がとてもくっきり、しっくりくる流れになっている。 もう百年も昔の英国の話なので、…

死の鳥

死の鳥 (ハヤカワ文庫SF) ハーラン・エリスン 伊藤典夫 (翻訳)【感想】 伝説のアメリカSF作家による短編集。 どうして今までエリスンの本は出てなかったのだろう。 そして今になって急に出始めたのはなぜなのか。 突拍子もない発想や展開は日本人好みのよ…

ビブリア古書堂の事件手帖3

栞子さんと消えない絆 三上 延ヤングの『たんぽぽ娘』がいくつかの本に収録されるようになったのは、この第三巻のおかげだと思う。 古書価が高く、なかなか読めなかった短篇だけに、その読後のイメージは鮮やかで、アニメ向きだと思う。 この作集でもその中…