「ミステリ・オペラ 宿命城殺人事件」
(ハヤカワ・ミステリワールド) 単行本 – 2001/4
山田 正紀 (著)

【紹介】
昭和13年満州と平成元年の東京。50年の時空を隔てて、それぞれの時代で起きる奇怪な事件。本格推理の様々なガジェットを投入した壮大な構想の全体ミステリ。

【感想】
「探偵小説でしか語れぬ真実もあるんだぜ。」

一年かけて、ようやく読み終わった。
上下二段682頁。
とにかく長いが面白い。執筆3年かけているのだから、1年ぐらいかけて連載小説のように読んだのがよかったのかも。
昭和13年満州と平成元年の東京を舞台とした本格推理のあらゆるガジェットを投入した壮大な構想の全体ミステリ」とあり、これでもか、これでもかの各々の時代で起こる歴史的な事件や殺人事件やのたたみ掛けには、確かに壮大としか言いようがない。
そして古くからの山田正紀ファンにとっては、現在と過去を行き来するSFな物語は、往年の「崑崙遊撃隊」や「エイダ」といった虚実ないまぜにした冒険小説の面白さに相まって、舞台となる戦前と戦後の昭和時代のノスタルジックな雰囲気も相乗効果を演出しています。
「全体ミステリ」との言いようですが、確かにペダンティックではないものの、伝統的な「ドグラ・マグラ」や「虚無への供物」、「匣の中の失楽」といった、いつ終わるかわからない、めくるめく迷宮と似た感触があるのは確かですね。
こうした全体ミステリへのオマージュだったのかも知れませんし、「検閲図書館」という歴史のすべてを記録するかのような超越的な存在の登場は、「ドクラ・マグラ」の「胎児の夢」に似たメインテーマと同様に、不気味な読後感を残したまま終わります。