2007-01-01から1年間の記事一覧

【武州公秘話】

武州公秘話 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2005/05/25メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (17件) を見る驚くほどに、伝奇小説である。 谷崎がこういうファンタスティックな伝奇を書いていたとは…

「亡命文学論」沼野充義

「亡命文学論」沼野充義 作品社徹夜の塊 亡命文学論作者: 沼野充義出版社/メーカー: 作品社発売日: 2002/02メディア: 単行本 クリック: 12回この商品を含むブログ (12件) を見るこの人の知的領域はロシアだけに留まっているのではなく、バイリンガルという人…

「旅先でビール」川本三郎

「旅先でビール」川本三郎 潮出版社旅先でビール作者: 川本三郎出版社/メーカー: 潮出版社発売日: 2005/11/03メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (33件) を見る川本三郎の評論は退屈なので敬遠していたが、たま…

【モンキーハウスへようこそ・1】

ハヤカワ文庫SFカート・ヴォネガットの短編集。 それぞれは1950年代あるいは60年代に書かれたもので、この本じたいは1989年にSFとして出版されている。 いま読むとどこがSFなのだろう?と考えてしまう。 まあ80年代だったら、確かにこれは主流文学では出せな…

【蟻塚の中のかぶと虫】

ストルガツキー兄弟 深見 弾訳 ハヤカワ文庫SF 地球に転属される途中で行方不明になった進歩官アバルキン。秘密調査員マクシム・カンメラーはこの男の捜索を命じられた。だがカンメラーが立ち入った質問をすると、上司はたちまち口を閉ざしてしまう。しかも…

「本の雑誌」2007・2月号

鏡明「日記本と喫煙ウサギ」から。 次の本は面白そう。内門洋とミズモアキラ「レコード・バイヤーズ・ダイアリー」 別に、プロ用の市場があるわけではないから、一日中大中古レコード・ショップの安売りの箱をあさる。中身のチェックのために、ポータブル・…

「廃墟のなかのロシア」

アレクサンドル・ソルジェニーツィン 著 /井桁貞義 訳 /上野理恵 訳 /坂庭淳史 訳ソ連崩壊後のロシアはいったいどうなっているのか? ソ連崩壊後のロシアが抱える深刻な問題を取り上げて総点検し、祖国をいかにして再建すべきかを提言する。祖国ロシアを…

「高原好日」加藤周一

信濃毎日新聞信濃に関係する文化人の思い出を綴ったもの。 とはいってもほとんど「軽井沢」の別荘に居たような人々なので、少し興ざめ。 しかし加藤周一のこういうエッセイは至極うまい。 少年の頃から信州浅間山麓の信濃追分で夏を過ごした、加藤さんの半世…

「貧困旅行記」つげ義春

この人が漫画家になったのは、たまたまだったのではないか、と思わせる旅行記である。 とてもイメージしやすく読みやすい文章。 写真だってプロみたい。 才能的には横尾忠則と近いのだと思う。 もっとこういう随筆を読みたい。新版 貧困旅行記 (新潮文庫)作…

「海辺のカフカ」村上春樹 / 新潮社

「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」これまでの村上作品とは違うテイスト。 新潮社系の「うづまき鳥」や「世界の終わり」と構成とか似ていないこともないけど、オウム以後の世界という雰囲気がする。 それと登場人物がこれまでと違って、…

『ミネルヴァの泉は百円本の森に降り立つ』

(情報センター出版局/竹信悦夫著) [rakuten:book:11558099:detail]高橋源一郎が朝日新聞でべた誉めしていたのを思い出して、図書館で借りて読んだ。 源ちゃんの宣伝ほどには面白くなかった。 文章がなんというか、硬い。 サービスしていることはわかるの…

「いかに放埓な厭世主義者であっても依然として、悪しき目的のあることを信じて、世界の事象に少なくとも一つの目的を、つまり没落を設定する。」フリーデル

そうなのだ。 若い頃に目的を持つ人生に凄く疑問を持っていたのは、こういうことだったのだ。 その頃はこの雰囲気をうまく言葉にできなかった。 スピノザを読んでもわからなかったが、当時感じていたのは、高度資本主義とかなんとかいっても何らかの意志や目…

月日は百代の過客にして、ゆきかふ年も又旅人なり

此処ではない何処かにいきたい。 常にみんな、そう思っているのではないか。 日本のポップカルチャーに共通しているのは、そうした根無し草だ。 デラシネだ。 みんな五木寛之が悪いのだ。 どこにも属していないといいながら、ちゃっかり主義主張だけは大声で…

「ナボコフ短篇全集・1&2」ウラジミール・ナボコフ

作品社 『ロリータ』によって、世界中にセンセーションを巻き起こしたナボコフは、20世紀文学における輝かしい成果として多くの作家に影響を与えましたが、昨年の生誕100年を機に、ますますその評価が高まっています。ロシアに生まれ、亡命後にもロシア…