【蟻塚の中のかぶと虫】
ストルガツキー兄弟 深見 弾訳
ハヤカワ文庫SF
地球に転属される途中で行方不明になった進歩官アバルキン。秘密調査員マクシム・カンメラーはこの男の捜索を命じられた。だがカンメラーが立ち入った質問をすると、上司はたちまち口を閉ざしてしまう。しかも仕事は五日間で極秘裏に遂行しろとの期限付き。進歩官に関する資料に目を通してみても、失踪しなければならない理由は見当たらない。両親、女友達、恩師―アバルキンの周囲の人びとから調査を開始したカンメラーだったが、彼はやがて、人類の未来をおびやかす驚くべき事実に直面することに......ソ連SFの雄が贈る会心のSFミステリ
(文庫版裏表紙より)
SFミステリというカテゴリに入るらしく、確かにミステリだ。
良質だとは思うのだが、ロシア作家の傾向としての頑なさから、読むのが辛い。
物語の構築はさすがに欧米にはない硬質なもので、他の作家では得られない
雰囲気を楽しむことができる。
しかし、それにも増して物語に登場するSFのガジェットが古めかしいというか、
その背景が不条理的でしっくりこないのが、今読むとつまらない原因だろうか。
どうしたって読者はソ連の作家と言えば、偏屈な収容所とか官僚機構を思い出さざるを得ないからだ。
おそらくロシアSFはこの特異な不条理小説に通ずるところがあるから知的に面白い
部分もあるのだろうが、私にはこの部分が今となっては読みきれなかった。
この「蟻塚の中のかぶと虫」はマクシム・カンメラー三部作の第二作目。
一作目は「収容所惑星」であり、三作目が「波が風を消す」。
どれもハヤカワ文庫SFから出ていたが、いまは全て品切れ状態。
A&B ストルガツキーのページ
http://www.asahi-net.or.jp/~yx6n-oon/ctp.html
- 作者: A.ストルガツキー,B.ストルガツキー,深見弾
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