【モンキーハウスへようこそ・1】

ハヤカワ文庫SF

カート・ヴォネガットの短編集。
それぞれは1950年代あるいは60年代に書かれたもので、この本じたいは1989年にSFとして出版されている。
いま読むとどこがSFなのだろう?と考えてしまう。
まあ80年代だったら、確かにこれは主流文学では出せないよなあ、という感想を持ったと思う。
しかし今ではSFであることを探すことの方が難しい。
この短編集のどれもが現代小説そのものであり、人々の心を揺るがすのに長けている、本当によくできた小説ばかりだ。
それは80年代だったら、いろんな権威のある現代文学の人々が賞賛しているSFなのだ、すごいのだ、みたいな論調で批評されていただろうこの本も、いまでは普通の短編集でしかない、ということかも知れない。
そういう意味では早すぎた作家なのだが、内容的には今だから読むと面白いのかも知れない。
いろんなレッテルから離れられた今だから、ハヤカワ文庫SFから出ていることだけを考えなければ、とても楽しめる本だ。
そういう意味でなぜハヤカワepi文庫にヴォネガットを入れないのだろう。
レ・コスミコミケ』(イタロ・カルヴィーノ)だってはいっているのに。

モンキー・ハウスへようこそ〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

モンキー・ハウスへようこそ〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)