『巨匠とマルガリータ』ブルガーコフ

巨匠とマルガリータブルガーコフ

ブルガーコフの代表作。1928年に書き始め、ソビエト政府の弾圧の時代に1930年に原稿を燃やした後に、記憶によってまた書き直したという。
このエピソードから推測されるような物語の展開もみられる。
とにかく冗長な小説で、はじめのうちはなにがなんだかわからないが、その混沌とした魅力から読み続けないといけないようなオーラにあふれている。
一体全体もの小説はなんなのか、よくわからないが、その印象から呼び出されるのは、ヘンリー・ダーガーだ。
このアメリカの引きこもりのような画家が、誰に見せることもなく、1万5000ページもの作品を描き続けたことに近い小説なのではないか。
ピラトの伝記を書いた巨匠とその恋人マルガリータの悪魔と契約したかのような「ファウスト」的な物語展開は、あまりにも紆余曲折しすぎで、ぐちゃぐちゃな展開な小説だ。
終わり近くに、話を大団円的に収束させていくが、それさえも冗長で、話の筋があちこちに飛びすぎていて、よくつかめない。
この苦渋さが共産政府を批判しているようでもないのだが、当時のソ連文壇に認められなかったのだろうと思う。
どのような評価を下すかは、あまりにも個人的な思惟では無理がありすぎる。
初期のピンチョンのような困難さと似ている。
ソ連アウトサイダーな小説として、どのように評価されているのか、知りたいところではあるけれど、ブルガーコフに関する日本語情報はかなり少ない。
まあ、この大部な小説を解読するのは半端なことではないし、まずもってなにが魅力で読み進めてしまうのか。
やはり「ファウスト」的な魅力なのだが、その外れっぷりが半端でないところをどのように解読すればよいのか。
いやはや、面白いけど、なんだかごちゃごちゃし過ぎて、カオスなまま読み終えたという読後感しか残っていないわな。