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「高原好日」加藤周一

信濃毎日新聞信濃に関係する文化人の思い出を綴ったもの。 とはいってもほとんど「軽井沢」の別荘に居たような人々なので、少し興ざめ。 しかし加藤周一のこういうエッセイは至極うまい。 少年の頃から信州浅間山麓の信濃追分で夏を過ごした、加藤さんの半世…

「貧困旅行記」つげ義春

この人が漫画家になったのは、たまたまだったのではないか、と思わせる旅行記である。 とてもイメージしやすく読みやすい文章。 写真だってプロみたい。 才能的には横尾忠則と近いのだと思う。 もっとこういう随筆を読みたい。新版 貧困旅行記 (新潮文庫)作…

『ミネルヴァの泉は百円本の森に降り立つ』

(情報センター出版局/竹信悦夫著) [rakuten:book:11558099:detail]高橋源一郎が朝日新聞でべた誉めしていたのを思い出して、図書館で借りて読んだ。 源ちゃんの宣伝ほどには面白くなかった。 文章がなんというか、硬い。 サービスしていることはわかるの…

「大正・昭和のブックデザイン」松原正世 ピエ・ブックス

まだまだ本が読めない。 仕事はまだ本格的に忙しいわけではないのだけど、本を読む時間がない。 通勤の電車の中では新聞か仕事の本を読んでいる。 この「レトロでモダンな書籍・雑誌の装丁デザイン」という副題がついた画集大の本は見ているだけで楽しいので…

「北極海へ」野田知佑 文春文庫

メディア依存というか、それ自体が生きることの現実や理想を世界観としている私のような人間からすると、そうした人工の情報ではなく自然の情報を読みながら生活できる著者は驚異である。

「発作的座談会」椎名誠・沢野ひとし・木村晋介・目黒考二 角川文庫

忙しい時はこうしたばかばかしい本がいい。

「死ぬには手頃な日」矢作俊彦 光文社文庫

短編集。こんなに突き放した描写で日本や日本人を書いた小説を読むのは久しぶり。 久しぶりというか、あまりいないよね、こういう作家は。 「サタディ・トワイライト・スペシャル」というきな臭い中近東を舞台にしたハードな日本人の友人同士の確執を描いた…

「さらば人間」田中光二 角川文庫

角川春樹ががんばってSFを文庫化していたときのもの。 なんとなくやっつけだよなあ。舞台もストーリーも。 あの頃の「野生時代」特有の雰囲気がする。 それにしても読書量は極端に減った。 家ではほとんど読んでいない。 通勤電車で文庫を開くのだが、座れば…

「創るモノは夜空にきらめく星の数ほど無限にある」宮脇修 講談社

食玩で有名になった海洋堂の社長の伝記である。 もともとはプラモデル屋から出発したのだが、その部分の回想はすこぶる面白い。 情熱とか無鉄砲とか関西商人とか、いろんな言葉が連想されてくる。 けれどフィギュア界を創造していくあたりから面白くなくなっ…

「あなただけができることをやりなさい」細貝俊夫 翔泳社

偉大なプログラマー23人の名言集、というより伝記である。 かつてプログラマーとして仕事をしていたからといって創造者のことは何も知らないものだ。 半分ぐらいは名前を知ってはいたが、彼らのことは何も知らなかった。 記憶に残ったのはCOBOLを作ったグレ…

「列島縦断へんな駅!?」所澤秀樹 山海堂

いまひとつエピソードに弱く、駅の説明だけに終わっている駅本。 最近、面白い旅ものを読んでないなあ。

「文庫本・雑学ノート」岡崎武志 ダイヤモンド社

こういう絶版本の紹介は面白い。 ただ著者と趣味が違うのでいまひとつであったが。 ほんとに著者は文庫好きなのだからこの本も文庫で出せばよかったのに、と思う本だ。水曜日。文化の日。 幼稚園のイベント準備の追い込みでかみさんは大忙し。 倒れるんじゃ…

「汁かけめし快食学」遠藤哲夫 ちくま文庫

強力な食欲本である。 なぜ汁かけめしはうまいのか。 これをえんえんと綴った本で、読んでいるうちにお腹が減ってくる実用本。 しかし食後には読む気にはなれないのが弱点であった。 久しぶりに楽しいエッセイを読みました。 著者のホームページも読みごたえ…

「鴎外の坂」森まゆみ 新潮文庫

森鴎外の小説は難しい漢字が多くて苦手なのだが、鴎外という作家にはとても興味をそそられている。 この評伝はとても身近な視点と地理的な感覚が新しく、面白く読めた。 まあ内面への踏み込みがないのがこの本のいいところなのだけど、やはり鴎外には苦渋な…

「昭和電車少年」実相寺昭雄

ウルトラセブンの監督が電車オタクだったとは知りませんでした。 特急とかよりも普通電車についての記述が多いところがとても彼っぽい。 「わたしは、そんな自動車専一の街がイヤで、ウルトラマンの地底怪獣テレスドンを、赤坂見附に出現させたが、所詮無駄…

「20世紀SF・1940年代」1・星ねずみ

木曜日。 ずいぶんと昔に買って読まなかった本だ。 アシモフとかクラークやらブラッドベリの短編が載っているが、やはりタイトルのフレデリック・ブラウンはいい。 最近、評価が高いスタージョンもなかなかだが、ラストのチャールズ・ハーネス「現実創造」は…

「夢の底から来た男」半村良

角川文庫版半村良短編集6巻目。 広告代理店に勤め、家庭を愛する平凡なサラリーマンを襲う悪夢の表題や民話的な想像力を日本列島改造華やかりし頃の工事現場を舞台にした「血霊」。 いま読むと古臭くて読むのが恥ずかしいところもあるが、なんとなく今では…

SFマガジン2004年10月号「ジーン・ウルフ特集(監修・柳下毅一郎)」

「アメリカの七夜」が載っていて、柳下毅一郎の「特集解説」が面白い。 宮脇孝雄、柳下毅一郎、大森望の対談を読んでも、『ケルベロス第五の首』は謎だらけであった。

「しあわせの理由」

グレッグ・イーガンを読み終わる。 表題作はとても哀しい話で、なんとなく「アルジャーノンに花束を」を思い出してしまう。 素直にいい短篇だなあと思う。 たまにはこういうひねくれてない本も読まないと、何のために小説なんか読んでいるのかわからなくなる…

「コックサッカーブルース」村上龍

まるでサドのような過剰な小説で、うんざりする。 それでも前世紀の小説と違うのは、バブル期の日本を葬ろうとする意志だろう。 その機動力をフウゾクの娘にジャンヌ・ダルク役を求めたりするあたりが村上龍ですね。 このジャンヌ・ダルク率いる秘密結社が不…

「むはの断面図」椎名誠

椎名誠のエッセイは無尽蔵なのだろうか。 まだ未読のものがあったりする。 この中では日記が面白い。 やはりプロは違いますな。連休一日目である。 なんとなく早起きしたので、子供たちと森林公園に行く。 久しぶりに行くと新しいアスレチックがいろいろでき…

「しあわせの理由」グレッグ・イーガン

いまどきのSFはSFらしいと思わないのだけど、イーガンは堅気だ。 とにかく驚かしてくれるアイディアがうれしい。久しぶりの仕事は嫌なことばかりだ。 それでも働かざるもの食うべからず、である。

「アジアの少年」小林紀晴

アジアの旅の写真集。たいして面白くなかった。 たぶんテーマが一貫してないからだろう。なんだか疲れが出て、昼間はだらだらと過ごす。 夕方から幼稚園で演奏会があったので、子供たちと繰り出す。 丸太をくりぬいたオリジナルの打楽器の演奏で、けっこう面…

「ボディ・アンド・ソウル」古川日出男

著者自身の日常から始まるのでエッセイなのかと思いきや、私小説であった。 なにが起こるわけでもなく、小説家としての日常がだらだらと書かれているだけだ。 なんとなく思い浮かべたのは太宰治。 毎日酒を飲んでクダ巻いてるとこなんて、よく似てる。 とい…

「食べていくための自由業・自営業ガイド」本多信一

いづれ会社を辞める身となって本屋をうろつくと、こういう本が目に入るようになる。 次は正社員になれない可能性も高いから自営というのも視野に入ってくる。 著者は職業相談をボランティアでやっている人。 失業者からお金は取れないから、というのがその理…

「シンプル人生の経済設計」森永卓郎を読む。

「年収三百万円時代」でも楽しく暮らせると言い出した人の本。 「シンプル人生」とは専業主婦と子供と住宅ローンという人生三大不良債権を処理することだと書いている。 まあ、そういう考えもあるだろうねえ。 しかしこの三つは大切なものだからみんな苦労し…

「奇術師」クリストファー・プリーストを読んでいる。

「魔法」から12年ぶりの翻訳だという。 非常に英国的でリリカルな作家で私は大好きなのだけど、日本での人気はマイナー作家から抜け切らず、なかなか翻訳でないのが残念だ。 この「奇術師」もライバルである二人の奇術師を巡る物語が入れ子構造になってい…

「 ガリバーが行く」野田知佑(新潮文庫)を読み終わる。

日本と世界の川をカヌーで下りながら紡いだ言葉の数々を収めた漕ぎおろしエッセイの第三弾。 別にアウトドアにもカヌーにも興味ないのに、最近この人の本ばかり読んでいる。 きっと自分にはない、男性としての価値観が貫かれているからだと思う。 少年の頃は…

「ケルベロス第五の首」ジーン・ウルフを読んでいる。

出だしはイメージが定着しないので、読むのが苦痛だった。 だんだんとイメージが蓄積されてくると微妙な世界が構成されてきて面白くなってくる。 確かに誰かが書いていたようにナボコフを読んでいるような感じもする。 不思議な作家だ。 今日は一日会社に居…

「キマイラの新しい城」殊能将之を読了。

迷探偵石動戯作とその助手アントニオの探偵物語の最新作。 テーマは、天使は三段論法ができる、です。 なんだかよくわからないと思いますが、これは聖トマス・アクィナスの言葉であり、今回の殺人事件の解答はこの言葉にあるのでした。 これはネタバレですが…