「隣接界」

「隣接界」クリストファー プリースト

内容紹介


近未来英国、フリーカメラマンのティボー・タラントは、トルコのアナトリアで反政府主義者の襲撃により最愛の妻メラニーを失ってしまう。住まいであるロンドンに帰るため、海外救援局(OOR)に護送されるタラントだったが、道中悪夢のごとき不確実な事象が頻発する。彼の現実は次第に歪みはじめ、さまざまな時代を生きる違う男の人生に侵食されていく。第一次世界大戦中、秘密任務を負うことになった手品師、女性パイロットに恋するイギリス空軍の整備兵、夢幻諸島で名をあげんとする奇術師……。語り/騙りの名手プリーストがこれまでの自作のモチーフを美しいパッチワークのごとくつなぎあわせ、めくるめく世界を生み出した集大成的作品。

感想
紹介文にあるように、プリーストの集大成的な世界が展開される。
全体的に映画のような視覚的な話の流れであり、それぞれのエピソードが重層的に、かつ過去の作品群とともに折りたたまれていく。
これまでの作品群の片鱗がいくつも現れ、確かにパッチワークのような構成で語られていく。
筆致が(もちろん日本語訳が)うまく、一気に読み進んでしまったが、随所にきっとプリーストならではの仕掛けがうめこまれていたのだと思う。
再読でそのあたりをもう一度、楽しめるのではないうかと思う。
本当に物語にひたれる楽しさを久しぶりに味わえた。
しかし、このラストは。。謎を説く続編が読みたいものだと切に思う。

隣接界 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

隣接界 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)