夏目漱石

行人

「行人」夏目漱石兄弟である弟を語り手に、孤独に生きる兄を描く家族小説。 妻を信じることもできず、妻の愛情を弟に確かめさせるような行動にも出る兄。 高等遊民という言葉でも語られてきた後期三部作であり、「塵労」という仏教用語を使い、厭世的な世界…

彼岸過迄

後期3部作の第1作である。 再読だけれど、ほとんど筋を覚えていなかった。 漱石はその序文で、数本の短編が集まってひとつつの長編を構成する作品、だと言っている。 しかし、そんな感じはなく、漱石らしい長編小説、あるいは新聞小説といった風だった。 「…

坑夫

『坑夫』夏目漱石漱石のもとに「自分の身の上にこういう材料があるが小説に書いて下さらんか。その報酬を頂いて実は信州へ行きたいのです」という話を持ちかける出来事が、この小説の発端とされている。 漱石には珍しい、実在の人物の経験を素材としたルポル…

【永日小品】

ときどき間欠泉のように漱石が読みたくなる。 でも体力気力がなくて長編が読めないので、小品が心地よい。 「永日小品」は、随筆のような小説のような手遊びのような小品。 それこそ風景画を見るように気分が漂える。それでも「過去の匂い」なんていう小品は…

【倫敦消息】

国へ帰れば普通の人間の着る物を着て普通の人間の食う物を食って普通の人の寝る処へ寝られる。少しの我慢だ、我慢しろ我慢しろ、と独(ひと)り言(ごと)をいって寝てしまう。寝てしまう時は善いが、寝られないでまた考え出す事がある。元来我慢しろと云う…