【永日小品】

ときどき間欠泉のように漱石が読みたくなる。
でも体力気力がなくて長編が読めないので、小品が心地よい。
「永日小品」は、随筆のような小説のような手遊びのような小品。
それこそ風景画を見るように気分が漂える。

それでも「過去の匂い」なんていう小品は、よく読むと貧困と情念、人間の性といったものが一挙に押し寄せてきて、とても重苦しい。
まるでアーヴィングを読んでいるような気分にさせられる。
情景は物を言わない死物ではないということだ。