SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと

チャールズ・ユウ

物理学的な多次元世界を舞台に父と子の葛藤を描く家族小説。
とでも呼べばよいのだろうか。
とにかく、ヘンな小説であることには間違いない。
面白いかと言われると、多少は。
と答えざるを得ない。
論文を読んでいくような楽しみがある人には、著者が何を考えているのかを追っていくのは面白いかもしれない。
しかし、家族小説として筋を追っていく読み方だと辛いものがある。
物理的な世界観と少年期の家族への想いがない交ぜになって、奇妙なオマージュになっている。
それが実験小説のようにみえて、そうではない、うがっていないストーリーになっているところがまた、余計に読者を混乱させる。
新しい小説と言えば、その通りかもしれないが、器はとても古いパラレルSFのような気がする。
すぐには読後感のようなものが思いつかないが、ウェルズのような大言壮語しない家庭的な時間SFのようなものだろうか。
訳者の円城塔の小説と限りなく似ているような気がするのは、気のせいではないと思う。
そんなSF小説モドキだった。

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと