X電車で行こう

筒井康隆編集の「60年代日本SFベスト集成」が出てきたので、山野浩一「X電車で行こう」を読む。
再読なのだが、記憶は薄いモヤのなかにあり、当時はあまり感動してなかったのだろう。
しかしいま読むと解説で筒井康隆が書いている通り、「凝った章立てや構成に音楽的要素を感じ、面白がっていた」ように、おもしろい。
一週間で書き上げたとあるように、スピード感とかこの感性の先になにがあるのだろう、といった未完成さに心揺さぶられる。
予想屋としての主人公も、まるでテレビに出ていた競馬評論家としての著者を思い浮かべてしまう。
この小説の独自性はいまでも独特なのだが、やはりこの頃の時代意識的な前衛性も感じられて、懐かしい。
山野浩一のSFあるいは文学的な仕事はすこしづつまとめられていくみたいで、楽しみだ。
自筆年譜によると「SF時評」を「読書人」で10年以上続けているらしいし、1972年に「読売新聞」の書評担当を始めているそうだから、それらを読みたい。
いづれこうした山野浩一の書評本を出して欲しいと思う。

山野浩一Koichi Yamano)公式ウェブサイト(新)
山野浩一(Koichi Yamano)公式ウェブサイト(新)