「防空壕」

防空壕江戸川乱歩
「戦争中に夜間空襲を受けた体験を描いて、意外な結末をつけたもの。B29の空襲を恐怖するよりは、夜の大空の美しさにうたれたことを書いたものである」江戸川乱歩

推理小説だからか、自らの作風に擬えたからなのか、斜に構えた空襲の描写は、いま読むと当然のごとくのような納得さがあり、よけいなまでに真実さが上長される。
乱歩ならではの描写や結末でなければ、私小説そのものであり、文学的である。
戦争になってからでは遅く、この国に住む人々が疑心暗鬼になるのは早く、どうにかいまのようなきな臭い空気が終わることを願うばかりである。