堀江敏幸

めぐらし屋

「めぐらし屋」堀江敏幸を読む。 傑作。近傍という言葉を思い出す。 とてもちいさな場所で起きる出来事をとても細かく描写している。 主人公の未婚の中年女性のちいさな出来事がつぶさに伝わってきて、その情景や気持ちの揺れ動きになんだか癒されるものがあ…

時計まわりで迂回すること

時計まわりで迂回すること - 回送電車V作者: 堀江敏幸出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2012/03/23メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 106回この商品を含むブログ (6件) を見る中央公論新社の「回送電車」シリーズの五巻目。 前半はいつものゆったり…

未見坂 (新潮文庫)作者: 堀江敏幸出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/04/26メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (20件) を見る「未見坂」堀江 敏幸 いろんな人たちのいろんな光景を写し取った画像をモノトーンに編集し直したような…

「振り子で言葉を探るように」堀江敏幸著者は20世紀最後の文学者と呼ばれている絶滅危惧種。 昭和の文人のようにきめ細かく丹念な文章を書く著者の書評集。 映画「エル・スール」の登場人物のように、「振り子を用いて地下水の在処を探り当てる不思議な力…

2012年11月に読んだ本。 「河岸忘日抄」堀江敏幸 フランスのどこかの河岸に係留した船を仮住まいとした著者らしき日本人があれこれと日常のささいな出来事を綴る、静かな随筆風の長編小説。 クロフツの探偵小説をなぞらえ、借りている船の大家の謎を巡りつつ…

熊の敷石 (講談社文庫)作者: 堀江敏幸出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/02/13メディア: 文庫 クリック: 13回この商品を含むブログ (89件) を見る「熊の敷石」堀江敏幸 フランスの片田舎で語られる古い友人との対話を中心に、静かな日常を描いた中篇。 こ…

「緩斜面」堀江敏幸 凧あげの話。 いまこういうなんでもない話を惹きつけるように読ませる作家は少ないと思う。「雪沼とその周辺」所収

「ピラニア」堀江敏幸 おいしくない食堂を営む店主の独白。 この短編集で堀江敏幸が描く人物は地方に住んでいる普通の人々ばかりなのだが、すこしばかり傾いでいる。 ほんの少しだけずれている人を少しだけおかしく描いている。「雪沼とその周辺」所収

「レンガを積む」堀江敏幸 地方都市によく見かける寂れた商店街の小さなレコード屋の店主の話。 なぜ流行らない店を続けているのか、どうしてこの店を開くに至ったのか。 淋しい川面を眺めるように彼の歩みを語る文章が優しい。「雪沼とその周辺」所収

「送り火」堀江敏幸歳の離れた夫婦にできた子供が大雨に飲まれて失われた話。 幸福と不幸を背負うことに身をつまされる。 子供を亡くすという忘れられない記憶が、いくら時が移ろっていっても後悔の中から色褪せない空虚を描いている。 悲しくてやり切れない…

「送り火」堀江敏幸歳の離れた夫婦にできた子供が大雨に飲まれて失われた話。 幸福と不幸を背負うことに身をつまされる。 子供を亡くすという忘れられない記憶が、いくら時が移ろっていっても後悔の中から色褪せない空虚を描いている。 悲しくてやり切れない…

「河岸段丘」堀江敏幸 小さな町工場を営む六十代の夫婦の話。 夫は工場の古い機械がおかしく感じられ、これも古くから付き合いのある六十代の修理工に見てもらうことを頼むのだが、どちらも年老いて小さくなってしまい、ふと人生の終わりを感じさせるのだが…

「イラクサの庭堀」堀江敏幸 雪沼に移住した謎の女性をめぐるお話。 小さなレストランを営み、小さな料理教室を開いていた女性が亡くなる。 それまで彼女のことをよく知らなかった隣人たちがその片鱗を浮き上がらせるように小さな出来事を語り始める。 なん…

「スタンス・ドット」堀江敏幸 (2002) 心に染みていく、心に残る、とても静かで深い処に連れて行かれる短編。 中年から老年に差し掛かる男の話で、日常の些細な光景から過去の陰影が語られる流れがとても自然で印象に残る。 この小さなボーリング場を営んで…