めぐらし屋

「めぐらし屋」堀江敏幸を読む。
傑作。近傍という言葉を思い出す。
とてもちいさな場所で起きる出来事をとても細かく描写している。
主人公の未婚の中年女性のちいさな出来事がつぶさに伝わってきて、その情景や気持ちの揺れ動きになんだか癒されるものがある。
こういう丁寧な文章を読んでいると、生きていて良かったと、素直に思うことができる。
人間の雑悪さというのは、ひとりひとりの人間の心情を簡単に無下にするところから始まる。
なにを大事に心のなかに持つかで、自分の前に見えてくる光景がまったく違うものとなることを教えてくれるのだ。

めぐらし屋 (新潮文庫)

めぐらし屋 (新潮文庫)