【少女には向かない職業】

少女には向かない職業桜庭一樹 東京創元社

非常に現在的な小説を読んでしまった、というのがまず感じたこと。
最近、古い小説かあまりに現実感がないものばかり読んでいたので、そう感じるのかも知れない。
現在の世相というものをとても身近に表現している作家なのだと思った。
この直木賞作家の小説ははじめて読んだのだが、いわゆるライトノベル的な要素を残しつつ、現在的なテーマを扱い、痛々しい若者の感性を中心にうまく描いていると思った。
この小説はいままでライトノベル的な位置づけに置かれるだろう作品を書いてきた著者はじめての一般向けの作品とのこと。
いまさらライトノベルというものを積極的に読むことはしないけれど、この作家のものであれば、読んでみたいという気にさせてくれる、久しぶりの本格的に物語な作家である。

感想めいたことを書くと、中学生という大人になりかける時代のひとりの人間の心をうまく描いている小説だと思う。
書かれたのは2005年なので、一時期話題となっていた「14才」というテーマで書かれた先行作品を幾許かでも意識していたと思われる。
それでも骨子は推理小説としての物語を強く意識しているようだ。
作中に道具として登場するカトリーヌ・アルレーという推理作家の「わらの女」などの仕掛け、あるいはゲームのシナリオ的な構成、それらをつなぎ止めている「14才」という社会的テーマ。

とてもうまく「14才」が描かれている分だけ、いわゆる殺人という推理小説の普遍テーマが軽く書かれているように感じてしまう。
物語が終わった後の少女たちの人生はその後、どうなってしまうのだろうと、非常に気になってしまう、ざらついた気持ちが残る読後感をどこにもっていけばよいのか。
実際にこれを読む十代の人々はそれをどう読んでいるのだろう。
そう感じること自体、四十代の人間が読むものではないということか。
少女たちの先にあるものを感じられる感性はもはや自分にはないのだが、ここにある何かが新しいことだけがわかるぐらいだ。
この小説に否定的ではないが、なんとなくまだ途上的なものに感じた。

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