2016年2月の読書

2016年2月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1909ページ
ナイス数:5ナイス

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)感想
戦時下という、もはや戦後の日本人にとっては特殊な状況をとてもリアルでグロテスクに、けれども魔術的な幻覚をもよおされるような、あるいは暴力的な麻痺状態を訴えかける作品。 物語のはじまりは探偵小説かと思っていたが、だんだんとリアリズムに展開が流れていく。おそらく後世に残っていく作品だろう。世界大戦という歴史のなかで、人間はどんなにおろかなことをしていたのか、物語の後半では痛々しいほどに問いかけてくる。この作家はいったい何を見てきたのだろう。
読了日:2月29日 著者:カズオイシグロ
関西赤貧古本道 (新潮新書)関西赤貧古本道 (新潮新書)感想
この人は本当に古本にはまってしまった杞憂な人としか言えない感じ。 冗談が冗談に聞こえない感じで読んでいて、ちょっと辛い。 自分も最近、ネット以外ではブックオフの100円本しか利用してないけど、ここまで徹しているとは古本道は厳しいもの。 もうちょっとゆるい方が幸せになれるかも。
読了日:2月28日 著者:山本善行
もやしもん(13)<完> (モーニング KC)もやしもん(13)<完> (モーニング KC)感想
ちょっと唐突すぎる終わり方。最後に目立たない主人公を目立たせて終わっているが、ちょっと肩に力が入りすぎてる感じで、いままでのスロウな性格がくずれているような。でも漫画なんだからそんなことは当たり前か。最後まで楽しませてもらいました。いずれ再読してみたい。
読了日:2月21日 著者:石川雅之
幻想文学、近代の魔界へ (ナイトメア叢書)幻想文学、近代の魔界へ (ナイトメア叢書)感想
東雅夫へのインタビューが同時代の自分としてはその頃の背景のリンクが繋がつて、あるいは同情して楽しかった。いまはSFばかり読んでいる気がするけれど、当時は幻想文学ばかり読んでいたことを実感した。それでもいまだに家にある泉鏡花全集は読み終えていない。平井呈一荒俣宏、「世界幻想文学全集」と三一書房をよく読んでいたことを思い出した。
読了日:2月14日 著者:一柳廣孝,吉田司雄
ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)感想
津原やすみの頃は知らない読者なので、津原泰水としては、ちょっともの足りない。津原泰水の意地悪さがあまり表面には出ていない。少女小説が原本だからそうなのか、こういう路線の話なのか。いやいや悪くはないです。次作も読もうと思う。主人公の吾魚彩子が、諸星大二郎の『栞と紙魚子』の神経が何本か抜けていると称される主人公の栞とだぶって楽しかった。
読了日:2月14日 著者:津原泰水
ウクライナ日記 国民的作家が綴った祖国激動の155日ウクライナ日記 国民的作家が綴った祖国激動の155日感想
21世紀の戦争とはこういうものだということを思い知らされた辛い読書だった。自宅のベランダから手榴弾の裂ける音と射撃音が聞こえる。武装した男達がマンションの階段で息を潜めている。部屋にひとり残された娘。そんななかでも日常生活は続く。恐ろしいことだけではない。楽しいことだってある。最後の著者の言葉が響く。「続いているのは戦争だけではない。命も、日々も続いているのだ」。
読了日:2月11日 著者:アンドレイ・クルコフ

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