関川夏央

「やむを得ず早起き」

「やむを得ず早起き」関川夏央を読む。 東日本大震災での人口減少から始まり、筒井康隆「幸福の限界」でつい30年前までは人口増加に恐怖していた昭和を思い出す。 「味な旅 舌の旅」で宇能鴻一郎はグルメとして知らた。 また、「夜明けのうた」や「夢見る…

【やむにやまれず】

かっこよくない、ごく普通に街中を歩いているような中年男を主人公としている短編集。 主人公は作者そのままでもあり、誇張でもあるのが透けてみえるよくできた「お話」である。 まったくおしゃれではない都会小説ともいえれば、ハードボイルドだった頃の探…

【森に降る雨】

中年男性の心の隙間を読むようなエッセイが並んでいる。 どれも倹しく寂しいものだけれど、そこへ陰鬱に落ち込んでいるのではなくて、コミカルに漂おうとする。 そこがこの中年男のいいところだ。 時がたてば、なんども読むに耐えるようなエッセイでもある。…

【貧民夜想會】

1980年代の旅の記録。 あとがきにあるように自己観察の記録でもある。 それは戦後日本の風景記録でもある。 「あきれるほどぴったりと、日本の戦後史をなぞっているからだ。 世間をいといつつ、また世間のひとを嫌いつつも、やはりわたしは世間の申し子であ…

【汽車旅放浪記】

鉄道趣味があったという(オタクというほどではない)、著者の文学趣味的ローカル線旅行記。 「楽しい汽車旅」、「宮脇俊三の時間旅行」、「「坊ちゃん」たちが乗った汽車」の三部構成となっている。 「楽しい汽車旅」は、主に昭和の文学者と国鉄各線のつなが…

【砂のように眠る】

「砂のように眠る」関川夏央 −むかし戦後という時代があった− 新潮文庫いわゆる昭和本の先駆けともいえる本。 この本は昭和24年から昭和47年あたりまでの昭和時代の出来事を対象としている。 戦後という復興していく時代を表象する本の評論と私小説が交互に…