【森に降る雨】

中年男性の心の隙間を読むようなエッセイが並んでいる。
どれも倹しく寂しいものだけれど、そこへ陰鬱に落ち込んでいるのではなくて、コミカルに漂おうとする。
そこがこの中年男のいいところだ。
時がたてば、なんども読むに耐えるようなエッセイでもある。
解説は、奥本大三郎
この本の大半は著者が頭の中で捏ね上げ、作り上げたものであることを優しく解いている。

4月の雨に濡れて沈黙する森はとても哀しい―。叙情、饒舌、寡黙。さまざまな語り口に、繊細にしてしたたかな筆者の姿が浮かび上がる。しかし、それは事実か、フィクションか?空想のナイフで切り取った小景が、練りに練った文章で紡ぎあげられる。短文の名手として名高い筆者が贈る珠玉の43篇。

「貧民夜想会」関川夏央 文春文庫・2