【貧民夜想會】

1980年代の旅の記録。
あとがきにあるように自己観察の記録でもある。
それは戦後日本の風景記録でもある。

「あきれるほどぴったりと、日本の戦後史をなぞっているからだ。
世間をいといつつ、また世間のひとを嫌いつつも、やはりわたしは世間の申し子である。」

それは若い頃の旅エッセイというか、私小説と呼べばよいのか。
とても文学的なんだけれど、サブカル以外の何ものでもない。
自然に目に入ってくる文章は、いいなあと思う。
その小ささにとてもあこがれる。

国際列車の低いプラットホームに降り立ち、見知らぬ大都会をひとり歩き安ホテルを探しながら敷石の運命について考察する―。
同時代の感性で人と文化を語る著者の海外ルポルタージュ・エッセイ!

「貧民夜想会」関川夏央 文春文庫・1