【砂のように眠る】

「砂のように眠る」関川夏央
−むかし戦後という時代があった−
新潮文庫

いわゆる昭和本の先駆けともいえる本。
この本は昭和24年から昭和47年あたりまでの昭和時代の出来事を対象としている。
戦後という復興していく時代を表象する本の評論と私小説が交互に構成されており、いわゆる団塊の時代がどんな時代であったかを表現している。

戦後の本として取り上げられているのは、はじめに「山びこ学校」無着成恭
その後、石坂洋次郎「陽のあたる坂道」、安本末子「にあんちゃん」、小田実「何でも見てやろう」、高野悦子二十歳の原点」、田中角栄私の履歴書」などが挙げられている。

どれも有名な本であり、ベストセラーと呼ばれているものばかりだ。
どれも読んだことがないし、これからも読むことがあるかどうかはわからない。
こうした本が書かれた背景を丁寧に描くことによって、この頃の昭和という空気をうまく描き出している。

それと伴走するように挿入されている私小説も懐かしくて、もの哀しい。

須賀敦子さんの解説が関川夏央の性格をうまく表現していて、面白い。

「戦後」は、貧困に苦しみつつ、つねに明日を信じて努力した時代であった。
一瞬の光芒を放ちながら、やがて輝きを失い、虚ろな社会へと変容していく時代であった―。
日本の青春だった「戦後」社会を、等身大の主人公が織りなす小説と時代を映したベストセラー(『山びこ学校』から田中角栄私の履歴書』まで)の評論で交互に照らし出す。
「戦後」の原風景を見事に抉り出した画期的な日本論。