「狂風世界」バラード

ぱらぱらと読み返す。
なんと1962年に書かれた作品。
ある日突然世界中に強風が吹き始めて、数週間で時速180マイルもの風が吹き荒れる。
物語はその強風と戦いながら生き延びようとする人間たちを描いている。
SF以外になんと呼べばわからないほどにSFなのだが、いま地球規模で起きているゲリラ風雨とか大地震とか寒波とかニュースで見ているとわからないもの、つまり日常の生活を奪われた人間やら生活というものを想像しているといった意味で、もの凄く文学的。
このSFという装置はいまでも有効なのだが、早いうちから「インナースペース」というイメージを使って、SF的状況と照応する人間の心象を描いてきたバラードがなぜ、マイナー作家として君臨することになってしまったのか。
不思議ではないが、どうしてもメジャーと成り得ないその要素というものは、なんなのだろうか。
ふざけた言葉でいえば、そんな確信的な文学という商品の歪みを体現しているような作家だったのかも知れない、という気もする。

狂風世界 (創元SF文庫)

狂風世界 (創元SF文庫)