夢幻諸島から

(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
クリストファー・プリースト 古沢嘉通

プリーストがデビュー時から書き綴っている異世界シリーズ。
こう書くと昔のペルシダーとかウェルズの短編などを思い出すが、たぶんプリーストが幼い頃に読んだSFの文学的な焼き直しのような浮遊感がある。
ガイドブックの体裁をとっているので、概要だけで終わっている島と魅力的なプリーストの語りで充溢している島とで大きな隔たりがある。
その隔たり、空間的な開きを架空の島々を私達に想像してもらえるようにいろいろとプリーストは工夫している。
そのように読めばいいのだが、わくわくするような冒険譚が尻切れで終わってしまうのに物足りなさを感じる。
もっともっと書き込んで欲しい物語であるのだけれど。
「双生児」のように文学的ではなく、昔の「逆転世界」のようなSFの雰囲気がある。
昔に創元文庫から出ていたSFも再販してほしいものだ。