「ウィトゲンシュタインの愛人」ディビッド・マークソン

ウィトゲンシュタインの愛人」ディビッド・マークソン

世界が終わり、最後の人間が語る思索的な小説。
なんだか文学や美術、音楽にまつわる、どうでもよい脚注だけでできあがっている小説のようだ。
どうでもよいエピソードが実はモノの本質を表していることはよくあることだから、意味深くとることはできるのだけれど、なんとなくボルヘスが万巻の書を読んで一冊の本をつくるような緻密さに近いような気がする。

ウィトゲンシュタインの箒」を書いたウォレスはこの小説を「ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』の世界に人が暮らしたらどうなるか、を実践した小説である」と言っている。

どちらかというと、後期の『哲学探求』のほうが近い雰囲気があると思うのだけれど。