比較言語学における統計的研究法の可能性について


寺田寅彦のブームがときどきやってくる。このエッセイは昭和3年に書かれたものだが、日本語とマレー後の類似性といったトンデモな話から、分子論拡散論で道筋を示そうとしたり、統計的密度の勾配によって、言語の拡散方向を推定するといった、先見的な発想が充満している。二国間の類似した意味を持つ単語をローマ字に置換して近似的平均値を出し、その比較から一致する確率を求めている。「統計的方法の長所は、初めから偶然を認容している点にある」と寺田寅彦は書いている。徹底して、実験科学を推進していたのですね。