「江差追分」

これも北海道で二ヶ月ぐらい旅したときの、歌に関するエッセイである。
林芙美子は耳がよかったのだろう、と思う。
漁場の男たちが歌っている江差追分を絶賛し、料亭で芸者の江差追分はその足元にも及ばない書き方をしている。
こういう日本の歌は結局、再現はできないだろうから、旅行記などを読んで想像するしかない。
演歌とも違い、舟唄というものは素人には覚えにくい節だと林芙美子は言い、ナポリの舟唄もとてもいい声をしていたと書いている。
まあ、歌のことばかり書いているわけではなく、旅のあちこちで見たものに賛同したり、難癖いったり、ふるい文章だけど、面白い。

文泉堂版林芙美子全集第十巻所収