『ミサキラヂオ』瀬川深

とにかく舞台設定がよい。2050年頃の退屈な世界の話。
三浦半島と思われる場所の雰囲気がよく、日本の衰退がここかしこに象徴され、すべてが郊外の光景となってしまっている。
独特な雰囲気の岬の世界をノスタルジックに描いたスリップストリームと読んでよいものか。
昭和の頃の日本SF的な世界でもあり、風景が少しばかりバラード風でもあり、昨今の小粒な現代小説風でもある。
そこが独特で、しかも遠い未来を描いているのにラジオが物語の中心というのが心地よい接着剤となっている。

ミサキラヂオ (想像力の文学)

ミサキラヂオ (想像力の文学)