小説読みには宮本常一という名前はうとい。
作家ではなく昭和時代の民俗学者である。
この全集には柳田国男も入っており、常民と呼ばれるところの昔の日本人から採取された物語が文学として採録されているのである。
この試みは成功しており、ここに選ばれている物語は懐旧的なものばかりではなく、優れた物語小説として読めるものばかりである。
ぽつぽつと宮本常一全集は図書館で借りては読んでいるのだけれど、その中から選りすぐった文章が読めるのはありがたい。
今みたいな辛めの時代だからこそ、昔の日本人の光景には強い郷愁を感じてしまう。

宮本常一  (ちくま日本文学 22)

宮本常一 (ちくま日本文学 22)