「燃ゆる頬」堀辰雄
ふうん。堀辰雄という作家はこういうボーイズラブを書く人であったのか。
昭和7年に書かれた短編らしい。
いわゆる戦前期の昭和であるのだが、なんとなく大正っぽい。
大正ぽいのかどうかわからないけれど、なぜか鈴木いづみを思い出したりした。
限りなく風俗的な光景を書いた鈴木いづみだったが、文章はこの堀辰雄と近いものがあるように思えた。
類似点が自殺というのは、なんとなく厭らしい観点なんだけど、表現が似通っているのはどこかの時空間で通じているからだ。
戦後期の類似した小説家と分けているのは、自殺は結果でしかなく、自殺を契機として考えていた小説家たちとは大きく異なる、という一点なのだと思う。
堀辰雄サナトリウムで見た光景を、高度資本主義に生まれたアニメ文化に還元する思索は無為だ。
しかしいまの子供たちが見ている光景には堀辰雄が見ていた光景以上の空虚があるのだと言いたくもなる。
いまでは既に傍観者でしかない自分でも、時代はさらに深刻になっているのだと思われてしかたない。