「完全な遊戯」石原慎太郎
雨が降る夜中のドライブ中、バス亭に立っている女を主人公と友人が、駅まで送ると騙し拉致し、監禁・拘束し輪姦を続ける。
あからさまな酷い小説であり、作者が都政を司っている間、この小説と似たような残虐性だけで行われたような事件がいくつも起きている。
共時性の中で起きている悪徳、あるいは類は友を呼ぶ、そんな悪辣な言葉や退廃の腐臭が漂う東京を想像させる。
戦争というのはやはりこういう人間たちが始めるものなのだろう。

いま読むとこのじいさんにモラルだか気概だかなんだか言われたくないよな、という感じのいい加減な青春小説。
どうしてこういうものを書く人が政治家になれるのか、よくわからない。
この小説はよいのだが、作家像とうまく結びつかない。
いずれにせよ、傑作であることには間違いないのだが。
愚痴りたくなるんだよなあ。

戦後短篇小説再発見〈1〉青春の光と影 (講談社文芸文庫)