【商人と錬金術師の門】

テッド・チャンは既に本屋で手に入らず、図書館からSFマガジンテッド・チャン特集を借りてきた。
この短編は、テッド・チャンアラビアンナイトなんだけど、アラビアンナイトの語り口と時代背景を借りたタイムマシン譚。

アイディア勝負の作品ではなく、主流小説に近い、他人の人生を見て、自分の人生観を考えさせられるような思索的な内容。
タイムマシン譚は、過去の自分、あるいは未来の自分を眺めるような事態を描くことが多いため、文学的にならざるを得ないのだけれど、この作品は、過去も自分も変えられないという真っ当さを深く、しかもアラビアンナイト的に人間の愚かさを描いているところが魅了されてしまうところ。
この作品だけ読むと、いまでは特にSFという括りでなくともよい、エンターティメントな出来上がりで、もっと違うジャンルの人にも読んでもらいたい作家という気がしてくる。

「商人と錬金術師の門」テッド・チャン 大森望
SFマガジン・2008年1月号」テッド・チャン特集所収