【Self‐Reference ENGINE】

円城塔の[Self‐Reference ENGINE]を読み終える。
なんだよこの不明解不可解さわ。
まさにこれはピンチョンだよねぇ。
ほんと初期の「V」なんかを彷彿とさせる。
ただし、世界文学としてではなく、日本SFとしての「V」であり、ピンチョンだわ。
様々な時空間を取っ替え引っ換えしているそのコンテンツがピンチョンでは「歴史」だったが、円城の場合は「SF」なんだよね。
こういうSF作家が登場したことは素直にうれしいが。。
しかしながら、もうこちらの脳ミソがついていけない。
理数系の空間イメージがもはや描けない頭になっている。
歳だなあ、と思う。
そんな自分でもこれはちょっとと思うのが、エンディング。
とても自閉的で、まるで私小説であったかのように終わるのが、とても日本的だ。
こういう終わり方ならもう少し稲垣足穂ぽく、宇宙の方から主人公を小突いて欲しかった。

そんな日本的私小説のオマージュという意味でおもしろかったのは、長屋に棲む巨大知性体。
どのような想像物なのか、単なる言葉遊びなのか、それは読者にまかせられる想像の領域なのかわからない。
それでも不可知なようで、べらんめえな知性体の登場は小松左京の「虚無回廊」や半村良の「虚空王の秘宝」を回想してしまった。

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