「芸術人類学」中沢新一

これだけ混乱している世界に対して、暴力や矛盾した民主主義とそこから生じる誹謗中傷などが悲観的になりながらも、

それしか解決法がないといった閉塞感に嫌気がさしている人たちはたくさんいると思う。

自己撞着的にどうでもいいことしか言わないテレビ評論家的な物言いはもうたくさんだと思う。

そうした世界の中でしっかりと自分を維持していけるのは宗教と芸術しか残されていないんじゃないかなと思う。

言うまでもないけど、このインターネットにも救いはないし、手段としても陳腐化し始めている。

この本はそうした問いかけに答えてくれるものだと思って紐解いたのだけれど、少し肩すかしだった。

いつもながらのタイトルと内容との乖離に少しばかり腹も立つ。

自分が読みたかったのは、冒頭のタイトルとなっているエッセイだけだったのに、それとは関係ないエッセイも収められている。

そのひとつひとつだけをみれば、面白いのだけれど、この本のタイトルで単なるエッセイ集というのは如何なものか。

とはいえ、この視点での発展を楽しみにしているのだ。

芸術が、人が生きていくことの基盤となるためには、どう考えればいいのか、まずはそのツールとしての考え方を教えてほしいのだ。

芸術人類学

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