「海の御墓」曾野綾子
ある人間の生き方をとても静かに、洗練した情景描写により強く印象を残す作品。
皇室と政府に招かれた英国の学者が、太平洋戦争時代に国籍を剥奪され、貧窮したその余生を世話をした女性の目から物語った名作短編。
信念に殉じた人間に潜む寂しさを感動的に描き出している。
こういう小説はやはり戦争というものを知っている人間にしか書けないのだろう。
だから今の作家はということではなく、国家や戦争という大きな暴力に翻弄された時代と人々がいた、という事実を感情として伝えられるのは文学しかないということだ。

自分の始末

自分の始末