『J・G・バラード短編全集01 -時の声』
『J・G・バラード短編全集01 -時の声』東京創元社
The Complete Short Stories J. G. Ballard: Volume 1
監修:柳下毅一郎
■「序文」 J・G・バラード(J. G. Ballard)::柳下毅一郎
・バラードの短篇に対する思い入れが読める。
・「ヴァーミリオン・サンズ」の詩作コンピュータがバルブ操作であるのはなぜかを語っている。
■「序文」 マーティン・スミス::柳下毅一郎
・バラードのビブリオグラフィが親密なエピソードとともに簡潔にまとまっている。
■「プリマ・ベラドンナ」 Prima Belladonna::浅倉久志
・バラードのデビュー短篇。『ヴァーミリオン・サンズ』に浅倉久志訳がある。
宇野利泰訳で「時間都市」にも所収。
・いま読んでもこれはバラードにしか書けないと思う。
・あの「大休止(ザ・リセス)」と呼ばれる時代のさなかだった・・・というフレーズには今もしびれる。
■「エスケープメント」 Escapement::山田和子
・これは初訳?。繰り返される時間というテーマはSFとかアニメではよくあるが、それら日本のとは違って、とても英国的なパニックの書き方がお もしろい。
■「集中都市」 The Concentration City(Build-Up)::中村融
・人工爆発を背景にしたSFで、少年の冒険的な物語が後期のバラードを思わせる。
・「大建設」のタイトルで宇野利泰訳『時間都市』あり。
■「ヴィーナスはほほえむ」 Mobile(Venus Smiles)::浅倉久志
・「ヴァーミリオン・サンズ」の一編。音響彫刻というバラードにしか書けないアイディアがすばらしい。
・ここでも美人芸術家が登場するが、彼女が作った音響彫刻が暴走、破壊された後に残滓がじんわりと侵食がはじめる様が秀逸。
・「モビル」のタイトルで宇野利泰訳『時間都市』あり。
■「マンホール69」 Manhole 69::増田まもる
・手術で睡眠から開放された人々を描いているアナクロなSF。とても奇矯で破滅的でバラードっぽい。
・訳吉田誠一で『時の声』にも所収。
■「トラック12」 Track 12 ::山田和子
・まさに音に溺れてしまうという短篇。
・「12インチLP」というタイトルで永井淳訳『永遠へのパスポート』にも所収。
■「待ち受ける場所」 The Waitting Grounds ::柳下毅一郎
・異星人が建設した謎のモニュメントをめぐる、これもバラードらしい宇宙SF。
・深層時間というアイディアがインナースペース・オペラの面目躍如といったところ。
・吉田誠一訳で『時の声』にも所載。
■「最後の秒読み」 Now: Zero ::中村融
・ノートに名前を書き入れるとその名前の人は死んでしまう・・というよくあるホラ話。
■「音響清掃」 The Sound-Sweep ::吉田誠一
・「ヴァーミリオン・サンズ」の一編じゃないの?すごい傑作。
・まるで昔のイタリア映画のように煩くも哀しい物語。
未来派の音楽みたいな音響清掃というアイディアの描写もすばらしい。
・吉田誠一訳で『時の声』にも所載。
■「恐怖地帯」 Zone of Terror ::増田まもる
・バラード版ドッペルゲンガー話。なんとなくサイケな展開。
・吉田誠一訳で『時の声』にも所載。
■ 「時間都市」 Chronopolis ::山田和子
・時計が廃止された世界を描いた、バラードの名作短篇。
・廃墟をさまよう少年の冒険がなんともいえない未来感を演出しているし、読後感も気持ちいい。
・これはいまなら映画化されてもおかしくほど、映像的な作品。
・「吉田誠一訳で『時の声』にも所載。
■「時の声」 The Voices of Time ::伊藤典夫
・これもバラードを有名にした傑作短篇。
・奇怪な生物や遺棄された終末に向かっていく風景は孤独である。
・いま読むと宇宙からのカウントダウンはサイケデリックだと感じる。
・「吉田誠一訳で『時の声』にも所載。
■「ゴダードの最後の世界」 The Last World of Mr. Goddard ::山田順子
・ミニチュアの世界と現実世界の交錯という、これもよくあるSF的なホラ話。
・「ゴダード氏最後の世界」のタイトルで伊藤哲訳『終着の浜辺』にも所収。
■ 「スターズのスタジオ5号」 Studio 5, The Stars ::浅倉久志
・「ヴァーミリオン・サンズ」の一編。女流詩人オーロラ・デイの登場。大好きな短篇のひとつ。
・詩を作るマシンやテープのイメージがアナクロな未来を彷彿とさせてくれる。
・『ヴァーミリオン・サンズ』に浅倉久志訳がある。宇野利泰訳「アトリエ五号、星地区」で「時間都市」にも所収。
■ 「深淵」 Deep End ::中村融
・これも地球最後の魚といった、バラード特有の滅びゆく風景が描かれる一編。
・吉田誠一訳で『時の声』にも所載。
■「収録作品解題」柳下毅一郎
■「二十一世紀の神話創造者」柳下毅一郎
・「J・G・バラードは二十世紀でもっとも偉大な作家ではないかもしれない。だが、彼が二十世紀においても指折りの重要な作家として名を挙げられ るのはまちがいないだろう。」

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